2014年受賞作品

モダニズム建築の象徴

日本建築学会賞に選ばれる建築物は単純な外観は愚か、内観のいたるところまで精密に細工された芸術品となっています。普段意識することのない建物、その中へ自身が勤める会社があると考えたらやはりどこか誇らしかったり、自慢したいと思ったりするものではないだろうか。少なくとも我関せずといった無関心を貫きながらも、内心心躍るように喜びを表現したくても出来ない、なんて人もいるだろう。ただこうした賞に輝くとなったらどうしても一流企業というブランドに勤めていないと早々機会もないため、やはり自分とは縁遠いと思ってしまう人が圧倒的に多いだろう。それこそ企業に勤めていても支店などの地方へ勤務している人にすれば、建築業界の中で最も権威あるとものに選ばれたと言っても実感は沸かない。

まぁそんなことは抜きにして、観光スポットとばかりに眺めている分にはお金は必要ない。2013年度は惜しくも該当作品はないと言われてしまったが、昨年2014年については日本建築学会作品賞に選ばれた建築物が3つあるので、それらを参考にモダニズム建築という観点から分析した場合にどのような建築物が優れていると評価されているのか、考察してみよう。

2014年度 作品賞受賞作

明治安田生命新東陽町ビル

まず一つ目の作品として、東京都江東区にある『明治安田生命新東陽町ビル』が選ばれた。外観を実際に見たことがある人はわかっていると思います、非常に精巧なデザインをした憧れのオフィス情景が物の見事に体現されたようなオフィスビルがそこにはあります。ここでいつかは働きたいなんて考えている人もいるでしょう、就活生にすればいの一番で第一志望にしてもおかしくありません。

このオフィスビルを建築する際のテーマとして取り上げられたのは、『閉じた均質空間から脱却、オフィスワーカーのアイデンティティを促す空間性の獲得、ならびにシームレスなオフィスレイアウトが可能で組織変更などへの高いフレキシビリティを追求』となっている。文面だけで見てもわからないので簡単に解釈すると、どうしても画一化されやすいデスクワークという仕事の中で、刺激が生まれ想像性豊かな企画が立てられる空間を形成しつつ、仕事に対しての正確さと効率アップを目指すことを意識して、フロアサイズを広げつつも低階層の巨大なビルにした、こんな感じだ。

フロア辺りなんと1,300席も収納できるというから、その広さがどれほどのものかは言うまでもないでしょう。採光溢れるフロアでの仕事をすることにより、どうしても無菌になりがちなワンパターンとなりがちな業務の日々にならず、毎日を有機的に過ごせるようなオフィスを作り上げる事に成功し、見事日本建築学会賞を受賞したという。

SHARE yaraicho

次に紹介するのは近年新しい住まいの形として注目されているシェアハウスの最新スタイルを表現した『SHARE yaraicho』だ。シャアハウスという新しい住居が提案され、見知らぬ人が同じ屋根の下で共有スペースを使用しながらの生活をしていくもの。簡単にいえば同居に近いが他人、それこそ知人や友人といった枠ではない見たことも聞いたこともない人同士が住む。難色を示す人もいるはず、メディアで男女が共同生活を送って恋愛関係になるといった演出が話題となった番組などもありましたが、影響されて始める人は増えているという。

しかし友人でもない人といきなり一緒にクラスと言っても、やはり色々とルールを決めなくてはならない。互いの生活があるため、必要以上に干渉しないのは勿論だが、同居する上で共有スペースについての利用方法、さらに個々人のプライバシー保護といったものも守らなくてはならない。そうした問題を解決するために創造されたのが、このyaraichoだという。

これまでの日本社会における住まいの定義が変容しつつある中で、従来の価値観では説明できない住み方としてシェアハウスが登場したが、やはり問題点となるのはプライベートさというものが失せてしまうということ。この建築物ではそうした個人の時間を侵害しないよう設計され、さらに共有スペースについても狭すぎず、広すぎない空間を形成したことで今までのシェアハウスには見られない建築物を作り上げたことで、日本建築学会賞を受賞する経緯となった。

NBF 大崎ビル

最後に、山手線など主要路線が通っている大崎駅のすぐ側に建築されている『NBF 大崎ビル』もまた日本建築学会賞を受賞している。こちらの建築物の特徴としては、最大の魅力となっているのは『バイオスキン』という技術が組み込まれていることだ。この技術はヒートアイランド現象を抑制するためのもので、雨水などを利用して建物の足元を冷やすことにより、地表熱を下げるという取り組みが実践されたケースとなっている。耳にすることはあっても中々実感しないヒートアイランド現象だが、都内でも都市部と郊外を同じ日に歩くだけで気温差を感じることがあるはず。地味にこの問題は早々に解決してもらいたいと思っている人は多いはず。

ですが建築物を開発していくとどうしてもヒートアイランド現象が引き起こされてしまう、本来は自然環境によって地表にこもった熱が蒸発していく仕組みとなっているのだが、その肝心の自然が失われている都市部では人工的に熱を下げるための技術を開発しなければならなかった。その一貫としてこのバイオスキンを導入したのがこのビルとなっている。また明治安田生命新東陽町ビルと同じく、これまでにないオフィスビルとしての内観デザインも斬新極まるもので、柱の無い広々とした内装は見事となっている。

建築物としての常識をことごとく打ち破り、そして社会問題としても取り上げられている建築業界の功罪と直面したその創意工夫性が評価されたことにより、受賞を果たした。

優れた建築物とは

世間では何かと『百選』などともてはやされていますが、本当の意味で優れている建築物を見たいと思うのなら日本建築学会賞に注目してみるといいだろう。受賞した作品こそ現代テイスト溢れる建築物の中でも、選りすぐりの作品が受賞しているため日本の建築業がどこまで進化しているのかを垣間見ることが出来る。興味がある人は観光がてらそんなところにも注目してみるといいかもしれない。